宇野功芳先生メモリアルコンサート   

先日、2016年6月にお亡くなりになった宇野功芳先生のメモリアルコンサートが終わりました。(すみだトリフォニー小ホール)


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ずっとブログをご覧くださっている皆さまには繰り返しになることもあるかもしれないのですが。。。



2年経って、このメモリアルコンサートを終えて、思った今の想いを綴っておきます。



私が先生と出会ったのは先生が81歳の時。
曲目はなんと昭和歌謡。
ものすごい「美」のこだわりをもって、溢れんばかりの情熱をもって、先生は「芸術」というものを全身で教えてくださいました。
もう言葉ではいい表せないほど沢山。
お亡くなりになるまでの4年間、先生とアンサンブルフィオレッティの皆さまと色々なところで演奏しました。




色々なタイプの指揮者の先生がいらっしゃるけれど、先生は先生の欲しい「世界」に妥協がなく、ちょっと自分の個性を出そうものなら、「ピアニストは黒子のような存在でいてほしい」と諭すようにおっしゃっていました。(黒子の解釈もまた深いのですが)



こんなに自由に弾きたいタイプの自分に務まるのか。。



求められるピアニズムは私が今まで経験してきた世界を超え、先生の芸術像を音にする為に4年間、本当に沢山悩みました。顔にブツブツができるほど、胃がおかしくなるほど大変でしたが、それでもなんとしてでも自分には全くなかった先生の「美の世界」に近づきたかったです。



ご一緒したどのコンサートでも、毎回すすり泣きが聞こえました。
そして一曲終わると拍手だけでなく、ため息とか、思わず口からもれる感想とか、そういった反応が客席から返ってくる、なんとも不思議な空間でした。
義理とかそういうものでなく、このコンサートを心から求めていらっしゃる方がいらしてくださっていたのかな、そう思いました。



たった4年でしたが、あんなに強烈にあんなに独特で妥協のない「芸術」を側で学べたことは、私のピアノ人生の大きな大きな宝物です。



その先生のメモリアルコンサート。
先生はいらっしゃいません。
前奏も間奏も後奏も、ピアノに近づきながら指揮されていた先生がいらっしゃらない。
何故か先生の棒を、手をみただけで、その空間や時間の流れがスッと変わる。
その先生がいらっしゃらないわけです。



とても悩みました。。。



フィオレッティの皆さんと先生とのお時間は16年間。私は4年間。



奏者それぞれの思い出の先生は一人一人違います。
テンポ感一つにしても、ニュアンス一つにしても。
それをどう、何に合わせていくのか。指揮者なしであの繊細な曲の表現を10人でどこまでアンサンブルできるのか。
悩みまくりました。



このコンサートを終えて思ったことがあります。



こうしてものすごい影響をくださった先生の生き様、「芸術」をちゃんと自分の中に成長させていかないといけないということです。



あの頃を思い出して再現していくとか、過去に帰るのではなく、どんどんその感覚を熟成させて、自分の人生と共に成長させていかないといけない、ということです。



これは私の中で確信しました。
音楽は生きていて、ライブのコンサートは生きているものにしか奏でることができないからです。



宇野先生が今回のコンサートを聴いていたら、「僕は君にそんな風に弾いてくれと言っていない」と言われたか、もしくは無言でニヤッとしてくださったか。。。だと思います。



私なんかが先生に出会えたのは奇跡だと思います。この奇跡が奇跡で終わらないよう、時間はかかるし、歩みはゆっくりかもしれないけれど、許されるのであれば、もっともっと「目に見えない世界」を追い求めていきたいと思います。



実は今回、迷いがあまりにひどく、自分の中だけで解決できなくなり前日に恩師に相談しました。恩師のクリアーな一言が、カツを入れてくれました。
もう泣くしかなかったです。



自分の音楽人生、出会えた先生方の背中は本当に大きいです。
音楽だけでなく、生き様からも、ものすごい影響を受けています。
宇野先生がくださったお手紙に「村田智佳子は世界中に自分一人しか居ません、というピアニストになってください。」とありました。
今の自分には恐れ多いけれど、そういうものを目指して日々経験を積み重ねていきたいと思います。




やっと2年経って冷静に先生との時間を振り返ることができました。
もっと教えて欲しいことが沢山あったけれど、あとは自分次第。
そう思ったコンサートの日でした。



終わった瞬間、あ〜終わって良かったよ。。。と心から、心からホッとしました。

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※宇野先生との思い出は過去のこのブログにまとめてありました↓


by chikako-kokachi | 2018-04-22 08:21 | 過去のコンサート

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